戦前の少年犯罪
管賀江留郎(少年犯罪データベース主宰)
築地書館
2010年
「近年の少年犯罪は凶悪化した」と言われることがある。
この言説に対する反証を提示することが本書の役割である。
本書の著者は、管賀江留郎氏とふざけたペンネームであるが、内容は全くふざけていない。
当時の新聞記事で確認した少年犯罪の事実を淡々と紹介していく。
酒鬼薔薇事件や長崎小学生女子の殺人事件など、平成の少年犯罪とこの本に掲載した事件の数々とを読み比べてどのような印象を持たれるでしょうか。
実際に起きた事件のごく一部を集めた本書を眺めただけで、戦前は数も質もひどい少年犯罪があるれていたことがおわかりいただけたのではないかと思います。(290頁)
著者は、あとがきで、本書の事実の積み重ねからは一段視点を高めて、人間の偏見に対する興味を表明する。
・・・情報の流れ方に興味がありまして、ちょっと調べればわかるようなことをなぜ、人間は誤った情報をやすやすと信じてしまうのか。
それもひとりやふたりのうっかりさんだけではなく、情報の専門家と自称しているようなとっても威張っていたりする人も含めてほとんどすべての人がそうだったりするのはどうしてなのか探ろうとしています。(293頁)
著者のこの問題意識は、次作の『冤罪と人類』に結実することとなる。
気が向けば、こちらの著作も取りあげたい。