プーチンの世界 「皇帝」になった工作員
フィオナ・ヒル、クリフォード・G・ガディ著
濱野大道、千葉敏生訳
畔蒜泰助監修
新潮社
2016年
二段組み約500頁の大作である。
文庫化されていないのは、内容の硬派さゆえに商業的には不発だったということだろうか。
本書は、「ロシアを支配する男がどんな人物なのか、彼がどう行動し、なぜ行動するのか、彼がロシアをどう変えてきたのか」を理解するための補助線を提供する(4頁)。
本書の執筆を通してわかったのは、ウラジーミル・プーチンにとって大事なのは、情報が真実かどうかではなく、彼の言動を相手がどうとらえるかである、ということだ。
プーチンにとって興味があるのは、特定の現実を伝えることよりも、その情報に対する周りの反応を確かめることなのだ。33頁
本書を読んで、改めてロシア、プーチンを本質的に理解することの難しさを痛感する。
歴史、宗教、イデオロギーなど考慮要素は枚挙にいとまがない。
昨今のロシア情勢について、視野狭窄な偏見にとらわれ、事象を単純化して見ていないかという反省を迫られた。