ポール・ウェイド著
山田雅久訳
CCメディアハウス
2017年
実証的根拠は乏しくても、自らの経験と照合してみると、一定の合理性があるように感じられる内容であり、とりあえず試してみようと思わせる。
本書はシリーズ化されており、増刷もされている。
それなりに世間に好評ということである。
もっとも、本書の著者がどのような者か(架空の人物かもしれない。)、どのような身体をしているか(ブヨブヨの肥満体かもしれない。)すら分からない。
通常であれば、知識伝達の文脈において、専門知の欠如、素性不明などは、説得力を減殺するはずである。
しかし、本書の場合は、通常はマイナスに作用する事項がプラスに作用したと思われる。
トレーニング関連の書籍は、世に大量に出回っているところ、他書との差別化が第一関門となる。
本書は、アメリカの監獄(=世間からすると未知の世界)をバックボーンとするという得たいの知れなさが、かえって興味を引く要素となっており、この第一関門を突破することに一役買っている。
本書の「怪しさ」自体が、もはや一つのエンターテイメントであるといえる。
本書は、固定観念にとらわれたトレーニーに対して、新たな試みをしようと思わせる極端な経験知を提供する。
また、大衆に受け入れられるエンターテイメントに必要な要素を考える上でも興味深い素材といえる。