実証史学への道 一歴史家の回想
聞き手 笹森春樹
平成30年
本書は、現代史家(あるいは、「歴史鑑定人」※本書のあとがきを参照)である秦郁彦氏の回想録である。
回想録自体も読み物とし面白いが、時折さりげなく示される著者の歴史家としての矜持が特に興味深い。
私が自身に課した信条がいくつかあります。特定のイデオロギー活動にコミットしない。フィクションが無意識のうちに刷り込まれないよう、歴史小説やテレビの歴史ドラマはなるべく見ない。フェイク(偽)、ニュースや詐話師に振り回されない知恵と技法を身につける。164頁
これは、虚実入り交じる膨大な情報が流通している現代では、歴史家でない者にとっても、賢明な判断をするために多かれ少なかれ必要な心がけであろう。